ギャップ・トリガー付為替デリバティブの考え方
評価損益が大きくなる要因として、ギャップ・トリガー付の為替デリバティブがあります。
レバレッジ(レシオ)型の為替デリバティブの際に記載しましたが、
ギャップ型、ギャップ・トリガー付という表現も、あまり外資系金融機関の契約書には無いように思います。
こちらも、日本の金融機関(特に銀行)特有の用語に思います。
※全ての金融機関がこの言葉を使っている訳ではないと思いますので、ご留意下さい。
ここで記載するギャップ・トリガー付の為替デリバティブとは、下記のようなものです。
@通貨オプションの場合は、行使価格がコールオプションとプットオプションで異なる
A通貨スワップの場合は、ある一定の為替レートよりも大きい場合と小さい場合で受取額と支払額が異なる
先ほど、レバレッジ(レシオ)型の為替デリバティブについて説明しましたが、 レバレッジ(レシオ)型は想定元本が変動するタイプです。
ギャップ・トリガー付とは、行使価格が変動するタイプです。レバレッジ(レシオ)型と区別すると、 「想定元本」、「行使価格」のとちらが変動するかが異なると思ってください。
ギャップ・トリガー付の契約は、通貨スワップを例にすると、以下のようになります。
ギャップ・トリガー付通貨スワップの契約内容
取引約定日 | 2012年3月31日 |
---|---|
当事者1 | B商事 |
当事者2 | A銀行 |
当事者1の支払額 | @73円/米ドル以上の場合: 7,300,000円(1ドル=73円) A73円/米ドル以下の場合: 8,300,000円(1ドル=83円) |
当事者2の支払額 | 100,000米ドル |
交換サイクル | 毎月末 |
期日 | 2017年3月31日 |
先ほども記載しましたが、ギャップトリガーある一定の為替レートよりも大きい場合と小さい場合で受取額と支払額が異なるものです。
上記の契約では、為替レートが73円/米ドル以上の場合は、1ドル=73円で米ドルを購入できるため、プラスになります。
為替レートが73円/米ドル以下の場合は、1ドル=83円で米ドルを購入することになるため、10円/米ドル以上は確実に損失になる訳です。
デジタル・オプション(バイナリー・オプション)について
ギャップトリガーを考える際には、デジタル・オプション(バイナリー・オプション)に関する理解が必要となります。
ここで、少しデジタル・オプション(バイナリー・オプション)について解説します。
ギャップトリガーは、上記のように、73円よりも円高になった場合、10円のマイナスが発生します。
このようなオプションを、デジタルオプション又はバイナリーオプションといいます。
バイナリーオプションは、FX会社で取引が増えてきた、あれです。
昔は、デジタルオプションという言い方が一般的でしたが、今はバイナリー・オプションという言い方の方が一般的になってきました。
デジタルオプション(バイナリーオプション)は、デジタル(0か1かの二択)でオプションが行使できるタイプの取引です。
今回のケースでいうと、73円よりも円高になったら、10円を支払うという、「73円を超えるか超えないかだけ」で判断することになります。
通常の通貨スワップや通貨オプションは、為替レートに連動して損益が変わりますが、デジタルオプション(バイナリーオプション)は、受取ることができる金額(支払う必要がある金額)は、固定されています。
巨大な損失、巨大な利益が発生する訳でもなく、決済の方法が理解しやすいため、最近、急激にFX取引で利用されるようになってきました。
ギャップトリガー付の為替デリバティブは、まさに、このデジタルオプション(バイナリーオプション)が付加されています。
ギャップトリガー付通貨デリバティブは、通常の通貨スワップに、デジタルオプション(バイナリーオプション)の売りを合成して、キャッシュフロー(決済額)を作成することができます。
通常の通貨スワップは、A+Bでした。
デジタルオプション部分をCとすると、ギャップトリガー付通貨スワップは、A+B+Cとして表現することができます。
ギャップ・トリガー付為替デリバティブのキャッシュ・フロー
ギャップトリガー付通貨スワップで発生するキャッシュフロー(決済額)を前回と同様に作成してみます。
まず、Aは従来と同じです。
A:米ドル買・日本円売のオプションの買いのフォワードレートと決済額の関係

またBも従来と同じです。
B:日本円買・米ドル売のオプションの売りのフォワードレートと決済額の関係

「C:デジタルオプション(バイナリーオプション)」部分は、下記のようになります。
C:デジタルオプションのフォワードレートと決済額の関係

これらを合作してギャップトリガー付通貨スワップ(A+B+C)のキャッシュフローを作成することになります。
この取引の場合は、73円よりも円高になった場合、10円の損失が発生するのですが、 為替フォワードレートの下がり方とは別に一気に損失が拡大しますので、大きな評価損が発生することになります。
株式会社yenbridge(エンブリッジ)では、為替デリバティブの評価を実施しております。
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