仕組債で資金調達を行う際には、為替レート(米ドル、ユーロ、豪ドルなど)や株価指数(日経225インデックスなど)に連動して利払いや償還を行うことから、 投資家にハイイールド(高利回り)の債券を発行することができます。
例えば、仕組債の仕組は比較的複雑で、代表的な仕組債であるPRDC債の場合、下記のような利息が設定されたりします。
PRDC債の利息 = 15% × FX ÷ 100 − 10%(下限0%)
※FXは、利払日などの為替レート
投資家の観点にたった場合、為替レートの変動によってPRDC債のクーポンを得ることを目的にしていて、 為替レート以外のリスクを取りたくない、と考えるのが普通だと思います。
仕組債は、社債であるため、当然に発行体(社債を発行する会社)の信用リスク(発行体が倒産するリスクなど)を受ける訳ですが、 投資家は為替リスクは取っても、信用リスクを取りたくないため、倒産等がほとんど発生しないであろう企業(信用リスクが極めて低い会社など)を仕組債の発行体として欲しいと思います。
信用リスクが低いということは、信用格付が高格付(例えば、AAA格)であることを意味しますが、高格付けの企業を発行体として仕組債を発行する必要があります。
このような理由から、仕組債の発行体として、高格付の企業に発行を依頼しないといけない訳ですが、このようなニーズに合致した企業が、欧州の政府系金融機関等でした。
欧州の仕組債の発行体として利用されていた企業は、例えば、下記のような企業でした。
- ノルウェー輸出金融公社(Eksportfinans)
- ノルウェー地方金融公社
- ドイツ復興金融公庫
- スウェーデン地方金融公社
- スウェーデン輸出信用銀行
- フィンランド地方金融公社
このうち、「ノルウェー輸出金融公社」は、ノルウェーの企業が輸出をしたときに、その輸出先からの支払い代金を担保に、
企業に資金を融資(先に代金を立て替えること)していました。
「ノルウェー輸出金融公社」は、その支払い代金を担保にしていたおり、リスクアセットは20%(恒久的免除)とされていましたが、
変更により今後100%になりますす。
この結果、以前は政府から免除されていたEUの資本要求指令(CRD:Capital Requirements Directive)が課されることとなり、
実質的に新規貸出を行うことを停止することを求められました。
また、実質的にも業務が停止されるということもあり、2011年12月19日に「ノルウェー輸出金融公社」は、発行するサムライ債について米ヘッジファンドから デフォルト(債務不履行)を宣言されました。
Moody'sやS&Pにおいても、「ノルウェー輸出金融公社」の発行体格付けを投資不適格(BBBよりも低い格付)とし、大幅に信用力が低下することになりました。
Bloombergニュースから抜粋
ノルウェー政府は同公社を段階的に縮小することを決めており、S&Pは政府がこれ以上の支援を提供しないことを示唆しているため格下げを決めたと説明した。
S&Pは同公社の格付けをジャンク級で最高の「BB+」とし、これまでの「BBB+」から3段階引き下げた。見通しは「ネガティブ(弱含み)」。クレジットウォッチからは外した。
初めに記載しましたが、仕組債はそもそも複雑な仕組を有して発行されるため、信用リスクを排除することが行われてきましたが、 「ノルウェー輸出金融公社」の格付けは投資不適格となってしまい、仕組債はジャンク債となってしまいました。
通常の仕組債は、信用リスクを排除して発行されているため、為替レート以外の影響はほぼ受けないと考えてもいいと思いますが、 「ノルウェー輸出金融公社」の場合は、信用リスクを加味して価格を計算しなければなりません。
特に、仕組債の発行期間は超長期(例えば、30年)になるため、信用リスクによって、相当ディスカウントをしなければなりません。
株式会社yenbridge(エンブリッジ)では、各種仕組債の評価を実施しております。
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