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会計処理

項目

1. 製造業の会計処理に関する特徴

入力者 山下章太 更新日 20090724

製造業の特徴は、自社で材料を仕入れて、製品を製造すると言う点です。自社で製造を行うことから、 他の業種よりも多額の設備投資が必要となり、仕入れから販売までの期間に長期間を有します。

製造業の財務内容

製造業が他の業種と一番大きく異なる点は、自社で生産した製品を販売しているという点です。たとえば、小売の場合は商品を仕入れて販売するだけですので、自社で生産するということはありません。 製造業は、製品の原材料を仕入れて、工場で従業員が生産・加工を行って製品を完成させます。 製造業独特の会計としては、原価計算というものが存在しています。決算書類としては、「製造原価報告書」というものを作成しますが、これは原価計算によって作成された、1年間に製造した製品の製造原価を示す報告書です。 通常、製品を製造する際には以下の3つの要因に分けて会計上は管理しています。

  • 材料費
  • 労務費
  • 経費

製造業の場合は、決算書上で製品の製造に関係する部門(工場など)と製品の販売を行う部門や本社機能のコストを分けて管理します。

事業所 業務内容 コストが計上される決算書
本社 商品の販売及び財務・総務・人事 損益計算書
工場 商品の製造 製造原価報告書

この場合、工場で全ての製品の製造を行い、製品の販売と本社機能を本社が行っている組織形態になっています。 組織図は図表Xのようになりますが、どこで発生しているコストなのかによって、反映される決算書が違ってきます。

【図表X:製造業の事務所】

また、製造業の一般的な製品の製造から販売までの期間は製造に時間が掛かるので小売業と比べると、仕入れから販売までの期間が長くなります。 図表X-1、X-2は、製造業と小売業の発注から資金回収に必要な期間をサンプルで記載したものですが、 工場での製品製造期間が1カ月掛かっているので、小売業と比較するとより長い期間が必要となっています。

【図表X-1:製造業の資金サイクル】

業務 必要期間
仕入(発注〜納品) 1カ月
工場での製造(商品企画〜製造) 1カ月
販売(営業〜商品配送) 2カ月
売掛金回収 2カ月
合計 6カ月

【図表X-2:小売業の資金サイクル】

業務 必要期間
仕入(発注〜納品) 1カ月
販売(営業〜商品配送) 2カ月
売掛金回収 2カ月
合計 6カ月

製造期間が必要になるということは、会社の資金繰りにも大きく影響します。 図表X-1とX-2のケースでは、運転資金が1カ月分余分に必要になっているので、製造業は小売業よりも1カ月分多い運転資金の確保が必要になってしまいます。 また、製造業は、受注生産(先に商品を販売し、販売した製品のみを製造する方法)かそうでないかによって、必要となる運転資金は変わってきます。 そして営業と製造の力関係によっても、資金効率は大きく変わってきます。次に不良在庫が大量に発生してしまう理由を以下に挙げますと

  1. 製造部門と営業部門の交流が少なく、目標製造数量が明確に設定されていない
  2. 工場には製品ごとに製品ラインがあり、毎日製品を作ることが仕事だと思っている
  3. 在庫数量の管理がきちんと行われておらず、保有在庫の数量が、本部に報告されていない

売上が見込めない製品の製造ラインを調整すれば良いのですが、調整が出来ていない場合、工場を稼動すればするほど赤字が発生するという状態が続くことが多々あります。 解決法としては、営業部門の販売実績をデータベース化し、製造部門の製品ごとの目標生産数量を工場と共有させる。 この結果、例えばある商品は約2年分の在庫を抱えていた状態が、約0.5カ月分の在庫数量のみで製造・販売を行うことに成功し資金効率は大幅に改善させることができた事例がございます。 受注生産の場合は、販売が先ですので、A社のような在庫調整が必要ありません。 また、会社の資金繰りや効率化を判断するためには、同業他社の財務比率と比較することも重要です。

例えばA社を例にしてみてみましょう。 まず、製造業の決算書に表示されている勘定科目について説明します。製造業の決算書に表示される勘定科目は、以下のようなものがあります。

  • 商品:販売先に販売する商品
  • 製品:工場で生産が完了した製品
  • 仕掛品:工場で生産中の製品
  • 作業くず・副産物:生産過程で出来た売却可能なもの
  • 原材料:生産に使用する材料

これを作業工程との対比で説明すると、図表Yのようになります。

【図表Y:作業工程と勘定科目】

作業屑と副産物は製品の製造過程のなかでできるものですが、通常はあまり重要性はありません。また、製造業の場合、製品と商品の区別はほとんど意味がありません。 同業他社とA社を比較すると、図表Y-1のようになっていました。

【図表Y-1:A社と同業他社平均の在庫回転期間の比較】

勘定科目 A社 同業他社平均 判定
原材料 1.5カ月 1.0カ月 劣る
仕掛品 2.0カ月 1.0カ月 劣る
製品・商品 2.5カ月 2.0カ月 劣る
合計 6.0カ月 4.0カ月 劣る

図表Y-1を見ると、A社は、同業他社と比べて在庫回転期間(在庫の保有期間)は悪い数値が出ています。 作っている製品によって、一概に良い悪いの判断はできませんが、実際に財務分析を行う際には、同業他社と比較することは極めて重要です。 A社の場合は、同業他社との比較の結果に基づき調査を進めていくと、以下のようなことが分かりました。

  1. 原材料:原材料が製品ごとに異なり、最小ロット(最小の注文単位)のみを仕入れたとしても、過剰仕入となってしまう。
  2. 商品・製品:主力以外の製品ラインで製造する商品は、売れ行きが悪く、過剰在庫を抱えることになってしまっている。
  3. 仕掛品:主力製品の最終工程の生産ラインが不足しており、最終工程前に仕掛品が多く滞留している。

仮に、1〜3のような現状が把握できたとすれば、それぞれについて改善策を考えることができます。たとえば、

  1. 原材料:製品の企画段階で、製造する際の原材料を共有化することによって、同一材料で製造できる商品数を増やす。
  2. 商品・製品:売れ行きの悪い製品の製造ラインを縮小し、余った生産能力と人員を主力商品の製造に回す。
  3. 仕掛品:Aの非採算商品の製造ラインの人員を利用して主力製品の製造を行えるようにするため、最終工程の生産設備の増強を行う。

といった、改善策を提案することが出来ます。具体的な、改善策の実行のための手段について記載することは省略しますが、 現状の会社の状況に応じて、どのような施策を採っていくかということが明らかになってくると思います。 さて、会計的な観点に話を移すと、在庫はある一定期間を超えて保有しているものは、不良在庫として、評価損の対象になります。 すなわち、作ったものの売れない在庫をB/S上に計上することは、会計上は望ましいことではなく、実際に売れる金額で評価をし直さなければなりません。 また、運転資金という観点からは、過剰在庫を製造するために必要となる資金は、正常な運転資金(「正常運転資金」といいます)ではないため、 銀行の融資対象とはなりません。会社の資金繰りを考えるうえでは、必要となる資金を最小化し、貸倒れが発生しないように融資を行っていかなければなりませんので、 会社の運転資金をよく分析することは、とても重要です。出資を行う際にも、同じことがいえます。 不良在庫を抱えるためだけに、資金を出しても儲かる訳はありません。会社の事業計画や決算書で数値面の判断を行うことも重要ですが、 違和感がある数値が生じている箇所については、具体的な施策は取ることはできないか、事業計画をより実現可能な状態にするためにはどのようにすれば良いか、 という点を常に考えていかなければなりません。



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