ストック・オプションの発行条件に応じて、評価モデルの選定・作成、パラメータの推定を実施し、 発行条件に最も適した評価を行う必要がありますが、算定を行う流れは以下のようになります。
@発行条件に基づく評価モデルの選定・作成
評価に用いられる主な方法は以下の2つになります。- ブラック=ショールズ・モデル
- 格子モデル
ブラック-ショールズモデルは1973年にフィッシャー・ブラック(Fischer Black)と マイロン・ショールズ(Myron Scholes)が共同で発表した理論であり、 このモデルを使って当時の懸案であったヨーロピアン・コール(及びプット)オプション(満期日にのみ権利を行使できるオプション取引)の オプション・プレミアムを計算してみせた。
後にロバート・マートンが彼らの方法に厳密な証明を与えた。
これらの理論は現代金融工学のさきがけとなったとも言われる。
[Wikipediaより]
ブラック=ショールズ・モデルはヨーロピアン・オプション(満期時にしか権利行使をすることができないオプション取引)
を評価するモデルですので、アメリカン・オプション(いつでも権利行使することができるオプション取引)を評価することは出来ません。
正確には、ブラック=ショールズ・モデルをシナリオごとに作成して計算する、モンテカルロ・シュミレーションなどを利用する際には、
アメリカン・オプションの評価を行うことが出来ますが、ブラック=ショールズ・モデル自体は、
アメリカン・オプションを評価することが出来ません。
余談ですが、破綻した有名なヘッジファンドであるLTCMには、マイロン・ショールズとロバート・マートンが取締役として参加していたことは有名です。
格子モデルの代表的なものとしては、二項モデル(バイノミアル・モデル)や三項モデル(トリノミアル・モデル)があります。
これらは、ブラック=ショールズ・モデルよりも複雑な計算が必要となりますが、
ある時点からの株価の変動のパターンを細分化して分析するもので、より精緻な計算結果を得ることが可能となります。
こちらは、全行使期間を細分化して、その度に権利行使価格と株価を比較してオプションの価値を計算しますので、
アメリカン・オプション(いつでも権利行使することができるオプション取引)の評価や、
複雑な条件のオプションもモデルに組み込むことによって計算が可能となります。
主な評価方法については、前述の通りですが、具体的には、以下のような条件によって、評価モデルを選定し、 一般的な評価モデルが利用出来ない場合には独自にモデルを作成する必要が発生します。
- 権利行使期間(行使開始日、行使終了日)
- 権利行使のタイミング(満期日のみ、月次、随時など)
- 権利行使価格の種類(一定・変動)
- 権利行使価格の上限・下限の有無
権利行使のタイミングが、終了時点以外の場合は前述の説明の通り、ブラック=ショールズ・モデルをそのまま使用することは出来ません。
また、権利行使のタイミングに応じてモデルの調整も必要になります。
権利行使価格が変動の場合(ムービング・ストライク:moving strike)は、ライブドアが発行したMSCBに代表されるものですが、 こちらもモデルの調整が必要となります。
更に、権利行使価格が変動する際に、その上限値や下限値が設定されている場合は、モデルの調整が必要となります。
A評価に利用するパラメータの推定
以下のような事項を検討します。オプションの価格を求める際に考慮すべきパラメータで最も重要なものは、ボラティリティです。
ボラティリティが大きくなるほど、オプション価格は大きくなりますので(詳細は次回以降の説明をご覧下さい)、
ボラティリティの数値の決定は慎重に行う必要があります。
次に影響を与える項目としては、配当率がありますが、これは配当が支払われた際の権利落ちによって、
株価がどう推移していくかということに影響を与えます。
配当率が大きくなるほどオプション価値は小さくなりますが、オプション価値に影響を与える要因となります。
これらのパラメータは、特に以下のような観点から値を決定します。
- 十分に過去の株価が存在しないケースにおけるボラティリティの推定
- 将来の配当による希薄化の推定
- 期間構造の設定
- 行使価格と株価の乖離によるボラティリティ・スマイル(スキュー)の設定の要否
Bオプション価格の算定
@、Aで決定した計算モデル・パラメータを用いて計算を行うステップです。
会計上の取扱については、こちらをご覧下さい。税務上の取扱については、こちらをご覧下さい。
1. ストック・オプションの概要
2.2 ブラック=ショールズ・モデルでの計算の概要
2.3 二項モデルでの計算の概要
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