ヘッジ取引とヘッジ会計の違い
ヘッジ会計はヘッジ取引とはあまり関係ありません。
例えば、以下の2つは何が違うのでしょうか?

ヘッジは、ヘッジ対象(リスクをヘッジする必要がある資産・負債)と ヘッジ手段(リスクをヘッジするための方法)に分けて考えていきます。
A社のヘッジ対象はドル建借入金です。米ドルの為替レート変動に関するリスクを為替予約(ヘッジ手段)で ヘッジしています。
ヘッジ対象 | ヘッジ手段 | |
---|---|---|
対象 | ドル建借入金 | 為替予約 |
元本/想定元本 | 1,000,000米ドル | 1,000,000米ドル |
当初(予約)為替レート | 100円/米ドル | 95円/米ドル |
リスク | 為替リスク | 為替リスク |
時価評価 | する | する |
ここで、注目する必要があるのが、『時価評価をする?しない?』という点です。
ヘッジ対象が時価評価されていて、ヘッジ手段も時価評価されている場合には、下図のように、 ヘッジ対象の為替レートによって発生する時価評価損益をヘッジ手段の時価評価損益が打ち消しており、 両方とも時価評価してしまえば、特に問題が発生しません。
結論からいうと、この場合は、ヘッジ会計は必要ありません。
為替レート | ヘッジ対象の損益 | ヘッジ手段の損益 | 差額 |
---|---|---|---|
90 | 10,000,000 | -5,000,000 | 5,000,000 |
100 | 0 | 5,000,000 | 5,000,000 |
110 | -10,000,000 | 15,000,000 | 5,000,000 |
※為替予約については、厳密な時価評価ではなく、為替レートと為替予約レート(95円/米ドル)との差額のみで評価を行っている。
C社がD銀行と行った金利スワップに関しても同様に整理してみます。
下図を見れば分かりますが、先ほどのA社とは、ヘッジ対象を時価評価しないという点が異なっています。
ヘッジ対象 | ヘッジ手段 | |
---|---|---|
対象 | 円建借入金 | 金利スワップ |
元本/想定元本 | 100,000,000円 | 100,000,000円 |
受取金利 | ― | TIBOR |
支払金利 | TIBOR+1% | 1% |
リスク | 金利リスク | 金利リスク |
時価評価 | しない | する |
このことから、ヘッジ取引を行っているかどうかということと、ヘッジ会計を行っているかどうかということは全く別次元の話となります。
C社の6ヶ月TIBORの変動によって発生する時価評価損益を比較すると、下図のようになります。
金利上昇リスクをヘッジするために金利スワップを行ったのですが、ヘッジ対象の借入金は時価評価されないため、 ヘッジ手段の金利スワップの評価損益のみが会計上反映されてしまうことになってしまいます。
このような会計処理になってしまうと、ヘッジ取引を行う意味が無くなってしまいますので、 会計上はヘッジ対象の損益が発生する時点まで、 ヘッジ手段の損益を繰延べる処理が行われます。

この繰延処理を、会計上は、「ヘッジ会計」といいます。
金利(6ヶ月TIBOR) | ヘッジ対象の損益 | ヘッジ手段の損益 | 差額 |
---|---|---|---|
0.5% | 0 | 0 | 0 |
1.0% | 0 | -2,500,000 | -2,500,000 |
1.5% | 0 | -5,000,000 | -5,000,000 |
※金利スワップについては、厳密な時価評価を実施せずに、金利と当初TIBOR(0.5%)との差額に年数を乗じて評価を行っている。

