不動産の相続・贈与に関する税金
相続税について
日本では、相続税という制度があります。
相続税という課税制度は、日本の政策的なところによりますが、日本の税法は、 自分で稼いだ所得や保有する資産を他人にタダであげるということを非常に嫌います。
たとえば、親子間であったとしても、父親が住んでいる家を息子にタダであげると贈与税の対象となり、 贈与額が1000万円を超える部分については、50%の課税が行われるなど、税制上は、非常に厳しい取扱いがなされています。
相続についても同様で、他人に対して資産をタダであげるわけですから、もちろん課税対象になるわけです。
相続税の計算方法を簡単に説明すると、以下のような手順で計算していきます。
@相続対象の課税価格の算定
A基礎控除額の算定
B相続税額の算定
まず、@相続対象の課税価格の算定については、相続対象の資産から借入金などの負債やお葬式などの必要経費を差し引きます。
具体的には、下記のような計算式で算定します。
次に、課税金額が差し引くことができる、A基礎控除額の算定を行うわけですが、相続税の基礎控除の計算式は下記のようになります。
基礎控除額=5000万円+(1000万円×法定相続人の数)
さらに、B相続税額の算定については、税率及び控除額が下記のようになります。
計算式は、下記の計算額を相続人ごとに計算していきます。
相続税額=課税標準×税率―控除額
【相続税における課税標準に対する税率、控除額】
課税標準 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | - |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
3億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円超 | 50% | 4,700万円 |
相続割合は、配偶者と子を50%とし、子が複数存在する場合は、子の50%を人数で按分します。
相続税は、最高税率が50%と非常に高額で、かなり高額の税金が課されていきます。
資産総額100億円の資産家であったとしても、最高税額の50%で贈与税が課されていくとすると、
1世代目の資産総額=100億円
2代目の資産総額=100億円×50%=50億円
3代目の資産総額=50億円×50%=25億円
世代交代が2回起こると、相続税だけで、当初の1/4まで資産額が減少します
相続税は日本国で暮らすうえでのルールですので、日本で居住する限りは必要となります。
このような理由から、相続税の無い国に、日本国から出て行く富裕層もいるのが現状です。
確かに、基礎控除額が5000万円ありますので、一般の家庭であれば、相続税はほとんど掛かりません。
一説によれば、相続税が掛かる世帯は、全体の5%程度しかないと言われており、全体の税額のうち、
相続税が占める割合は、2%程度しかないといわれたりしています。
中流家庭が多い日本では、適正な税率設定かも知れませんが、一部の富裕層のみが巨額の相続税を支払うという、極端な税制が存在しています。
相続時清算課税について
相続時清算課税は、生前贈与を行う場合に、贈与税の特例として認められている制度です。
通常は、贈与税は、相続税と同様に基礎控除が適用されますが、贈与税の基礎控除額は、年間110万円となっています。
控除額は設定されていますが、以下のように計算しています。
贈与税の額=贈与の金額―基礎控除(年間110万円)×税率―控除額
【贈与税の税率】
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | - |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,000万円超 | 50% | 225万円 |
【適用対象者】
贈与者は65歳以上の親、受贈者は贈与者の推定相続人である20歳以上の子であることが必要です。
税額の計算
@生前の対応
相続時精算課税の適用を受ける贈与財産については、その選択をした年以後、 相続時精算課税に係る贈与者以外の者からの贈与財産と区分して、その贈与者(親)から1年間に贈与を受けた財産の価額の 合計額を基に贈与税額を計算します。
その贈与税の額は、贈与財産の価額の合計額から、複数年にわたり利用できる特別控除額(限度額:2,500万円。
ただし、前年以前において、既にこの特別控除額を控除している場合は、残額が限度額となります。)を控除した後の金額に、
一律20%の税率を乗じて算出します。
なお、相続時精算課税に係る贈与税額を計算する際には、暦年課税の基礎控除額110万円を控除することはできませんので、 贈与を受けた財産が110万円以下であっても贈与税の申告をする必要があります。
なお、相続時精算課税を選択した受贈者(子)が、相続時精算課税に係る贈与者以外の者から贈与を受けた財産については、 その贈与財産の価額の合計額から暦年課税の基礎控除額110万円を控除し、贈与税の税率を適用し贈与税額を計算します。
A死後の対応
相続時精算課税を選択した者に係る相続税額は、相続時精算課税に係る贈与者が亡くなった時に、 それまでに贈与を受けた相続時精算課税の適用を受ける贈与財産の価額と相続や遺贈により取得した 財産の価額とを合計した金額を基に計算した相続税額から、既に納めた相続時精算課税に係る贈与税相当額を控除して算出します。
その際、相続税額から控除しきれない相続時精算課税に係る贈与税相当額については、相続税の申告をすることにより還付を受けることができます。
なお、相続財産と合算する贈与財産の価額は、贈与時の価額とされています。
適用手続
相続時精算課税を選択しようとする受贈者(子)は、その選択に係る最初の贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間 (贈与税の申告書の提出期間)に納税地の所轄税務署長に対して「相続時精算課税選択届出書」を受贈者の戸籍の謄本などの一定の書類とともに 贈与税の申告書に添付して提出することとされています。
相続時精算課税は、受贈者である子それぞれが贈与者である父、母ごとに選択できますが、いったん選択すると選択した年以後贈与者が亡くなった時まで 継続して適用され、暦年課税に変更することはできません。
日本の全ての税制は、「権利の上に眠る者は保護しない」というスタンスを取っています。法人の場合は、青色申告や源泉所得税の納期の特例など、 申請すれば税務署が認めてくれる制度があります。個人の場合にも、相続時清算課税などの申請すれば税務所が認めてくれる制度があります。
これらの制度は、国が特別の権利として法人又は個人に対して認めている制度であり、申請を行わなければ、認めてもらえません。
極端な言い方をすれば、相続時清算課税の届出を贈与を受けた年の翌年3月15日までに提出しない場合は、その後は一切認めてもらえません。 1日遅れても、税務署は受理してくれません。
仮に、相続税の申告を忘れていて、期限から1ヶ月過ぎて申告したとしても、税務署は受理してくれます。これは、相続税の申告は、義務ですので、 権利ではないからです。
このように、税務手続きは、その種類によって、取扱いがかなり複雑に決まっており、また、毎年改正が行われますので、かなり慎重に手続を行わなければ、 思わぬ落とし穴にはまる可能性があります。
ご参考情報
弊社代表の山下が執筆した不動産ファイナンスの入門書(金融マンのための不動産ファイナンス講座)が、全国書店でお買い求めいただけます。
【書籍情報】
書籍名:金融マンのための不動産ファイナンス講座
著者:山下章太
出版社:中央経済社
発行日:2011年3月25日
税込価格:3,150円
A5判/300頁
ISBN978-4-502-68490-6
内容(「BOOK」データベースより)
不動産をファイナンスとして利用するための基礎知識や、担保価値を把握するための手法、不動産を利用したファイナンスに関するさまざまな特徴を、難解な部分を極力排除したうえで、事例を交えながら解説。
出版社リンクページ:
『金融マンのための不動産ファイナンス講座』
amazon リンクページ

