キャップレートと割引率
不動産の価格算定にはさまざまな方法がありますが、収益物件の価格を算定する際には、収益還元法という 方法が一般的に利用されます。
収益還元法には、直接還元法とDCF法というものがあります。
キャップレートは、直接還元法において純収益の割引現在価値を算定する際に使用するもので「還元利回り」 とも言われます。
割引率は、DCF法に利用する際に使用するものです。
言葉の使い方だけですが、一般的なDCFの概念からすると、どちらも割引率ですが、不動産評価という観点か らは、用語として使い分けが行われます。
鑑定評価上は、「還元利回り(キャップレート)」と言った場合は、将来予想をリスク要因として加味した 利回り概念として整理されており、「割引率」と言った場合は、将来予想をリスク要因として加味しない現在価 値に割り戻すためのものとして整理されています。ただし、後述のように、完全にキャッシュ・フローの作成過 程において、将来を予想に反映することは不可能ですので、DCF法で使用する割引率が将来予想に関するリスクを 含んでいないかというと、そういうことはありません。
直接還元法=今後予想される標準的なキャッシュ・フロー÷キャップレート
DCF法=(毎年のキャッシュ・フロー÷割引率)の合計
※ここでは、考え方を統一するために、キャッシュ・フローを前提に考えます。
直接還元法でも、DCF法でも、結論としては同じ不動産価格になるのですが、算定の過程が少し違ってきます。
直接還元法に利用するのはキャップレート、DCF法で利用するのは割引率ですが、この2つは、 実際にはほとんど違いはありません。
単年度のキャッシュ・フローを割引くのが、キャップレートで、複数年度のキャッシュ・フローを 割引くのが割引率という言葉の使い方が違うだけです。
将来のリスクをキャッシュ・フローに反映しても、割引率に反映しても大した違いはありませんが、 その際には将来のリスクを反映したキャップレートと割引率を利用します。
ご参考情報
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【書籍情報】
書籍名:金融マンのための不動産ファイナンス講座
著者:山下章太
出版社:中央経済社
発行日:2011年3月25日
税込価格:3,150円
A5判/300頁
ISBN978-4-502-68490-6
内容(「BOOK」データベースより)
不動産をファイナンスとして利用するための基礎知識や、担保価値を把握するための手法、不動産を利用したファイナンスに関するさまざまな特徴を、難解な部分を極力排除したうえで、事例を交えながら解説。
出版社リンクページ:
『金融マンのための不動産ファイナンス講座』
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