鑑定評価の種類(価格評価と賃料評価)
鑑定評価には「価格の評価」と「賃料の評価」があり、それぞれ価格を求める手法と賃料を求める手法が不動産鑑定評価基準に記載されています。 これらの手法により求められた価格又は賃料をそれぞれ試算価格又は試算賃料といいます。
特に、銀行の場合などは、行内的に鑑定評価手法が定められており、正式な鑑定評価額は行内基準に従ったものを採用するケースが多いと思います。
このようなケースでは、銀行は、物件の評価を外部の鑑定業者に依頼するのではなく、評価に利用する賃料及びキャップレートの客観性を持たせるために
外部評価を実施するケースがあります。
不動産鑑定評価というと、価格の評価が一番分かりやすいと思いますが、意外に賃料の評価が多く行われています。
価格の種類(正常価格、特定価格、特殊価格、限定価格)
不動産鑑定評価による価格の種類には、「正常価格」「限定価格」「特定価格」「特殊価格」 の4種類があります。
@正常価格
正常価格とは、市場性を有する不動産について、現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場で
形成されるであろう市場価値を表示する適正な価格です。
不動産の鑑定評価は、通常は正常価格を求めます。
なお、合理的な市場とは以下のような市場のことをいいます。
・市場参加者が自由意思よって自由に市場に参加、退出できること。
・取引形態が、市場参加者が制約されたり、売り急ぎ、買い進み等を誘引したりするような特別なものではないこと。
・対象不動産が相当の期間に市場に公開されていること。
A限定価格
限定価格とは、市場性を有する不動産について、市場が相対的に限定される場合における不動産の適正な価格です。
例えば隣接不動産の併合のための売買や、借地権者が底地の併合ために行う売買などでは、正常価格のような合理的な市場を
前提としない特定の当事者間(例えば、特定の利害関係のあるA氏とB氏の間)においてのみ取引が行われることとなります。
B特定価格
法令等による社会的要請を背景とする評価目的の下で、正常価格の前提となる諸条件を満たさない場合の価格です。
次の場合が例としてあげられます。
・資産の流動化に関する法律又は投資信託及び投資法人に関する法律に基づく鑑定評価目的の下で、
投資家に示すための投資採算価値を表す価格を求める場合。
・民事再生法に基づく鑑定評価目的の下で、早期売却を前提とした価格を求める場合。
・会社更生法又は民事再生法に基づく鑑定評価目的の下で、事業の継続を前提とした価格を求める場合。
C特殊価格
文化財等の一般的に市場性を有しない不動産について、その利用状況等を前提とした不動産の価格です。
次の場合が例としてあげられます。
・文化財の指定を受けた建造物
・宗教建築物
・現況による管理を継続する公共公益施設の用に供されている不動産
ただし、一般的に担保として利用される不動産ではないため、あまり特殊価格を利用することはありません。
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【書籍情報】
書籍名:金融マンのための不動産ファイナンス講座
著者:山下章太
出版社:中央経済社
発行日:2011年3月25日
税込価格:3,150円
A5判/300頁
ISBN978-4-502-68490-6
内容(「BOOK」データベースより)
不動産をファイナンスとして利用するための基礎知識や、担保価値を把握するための手法、不動産を利用したファイナンスに関するさまざまな特徴を、難解な部分を極力排除したうえで、事例を交えながら解説。
出版社リンクページ:
『金融マンのための不動産ファイナンス講座』
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