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11. 鑑定評価の事例演習2:収益還元法(直接還元法)

入力者 山下章太 更新日 20110524

鑑定評価の事例演習2:収益還元法(直接還元法)

事例2:収益還元法(直接還元法)による不動産評価

A建設が保有しているオフィスビルを、今度は収益還元法(直接還元法)で評価してみましょう。

<事例>

上記のオフィスビルで現行賃料の平均が@22,000円/坪、市場における対象不動産と同等のオフィスビルの賃料が@22,000円/坪で 今後もこの賃料で推移することが予想されます。
赤坂における対象不動産と同等の不動産の還元利回りは5.3%とします。

上記を使って、収益還元法(直接還元法)で溜池建設の所有する不動産の価格を算定しましょう。

ここで、建物面積は1,600uですが、1,600uが賃貸面積として不動産評価額を算定するものとします。
また、物件に関するその他の条件は、下記のように評価します。
・敷金:月額賃料の10ヶ月分
・空室率:5%
・PMフィー:賃料収入の2%
・テナント募集費用:1ヶ月賃料の10%
・その他運営費用:23,257,236円
・敷金等の運用利回り:1.0%
・資本的支出(CAPEX):1,920,000円
・還元利回り(キャップレート):5.3%

<回答>

まず、一般的に賃料といったときには「坪あたり賃料」が利用されていますので、賃貸面積のuに合わせるためには、 1u=0.3025坪として算定します。

賃料単価(円/u)=22,000円/坪×0.3025=6,655 (円/u)

敷金は、賃料の10ヶ月分ですので、
敷金=6,655円/u× 1,600u×10ヶ月=106,480,000円 となります。
賃貸条件をまとめると、下図のようになります。

賃貸条件

賃貸条件

次に、運用収益を算定しますが、こちらは年間の純収益を算定して計算していくことになります。
運用収益には、水道光熱費、駐車場収入、礼金、更新料、空室等損失、貸倒損失などが含まれますが、 ここでは、不動産評価を簡易に行うために、空室率5%のみを利用して、運用収入を算定します。
大まかに計算すると、

年間賃料=月額賃料10,648,000円×12ヶ月=127,776,000円
空室損失=127,776,000円×5%=6,388,800円
年間運営収益=年間賃料―空室損失=127,776,000円―6,388,800円=121,387,200円

となります。算定の過程は、下図のようになります。

運用収益の算定

運用収益の算定

次に、運営費用についてですが、下記のような条件であったとすると、

・PMフィー=年間運営収益×2%=121,387,200円×2%=2,427,744円
・テナント募集費用=月額賃料×10%=10,648,000円 ×10%=1,064,800円
・その他運営費用:23,257,236円

運営費用の合計は26,749,780円となります。
計算条件をもう少し詳しく記載すると、下図のように運営費用を算定することになります。

運営費用の算定

運営費用の算定

運営収益と運営費用が算定されましたので、差額の運営純収益(NOI)を算定することができます。

運営純収益(NOI)=運営収益―運営費用=121,387,200円―26,749,780円=94,637,420円

NOIは、オフィスビルの稼動に伴う、純収益ですが、実際のキャッシュ・フローを算定する際には、 テナントから預っている敷金の運用益(預り期間中の預金利息等の運用収益)と資本的支出 (CAPEX:P/Lには計上されない固定資産の修繕コスト等)を考慮する必要があります。

今回は、敷金等の運用利回りが1.0%でしたので、敷金106,480,000円(家賃10か月分)を1年間に1.0%の利回りで運用できるものとして、 運用益を計算します。

敷金等の運用益=敷金×利回り×(1−空室率)=106,480,000円×1.0%×(1−5%)=1,011,560円

また、キャッシュ・フローの説明の際に、資本的支出(CAPEX)の概念について説明しましたが、 CAPEXは修繕費等に充てられる支出で、P/L計上されないものであるため、キャッシュ・フローを算定する際に調整を行う必要があります。
今回のCAPEXは、年間1,920,000円でしたので、キャッシュ・フローを算定する際にマイナスする必要があります。

NCF=NOI+一時金の運用益―資本的支出=94,637,420円+1,011,560円―1,920,000円=93,728,980円

実際に計算を行う際には、下図のように算定します。

NOIからNCFの算定

NOIからNCFの算定

さて、ここまでで、物件から発生するキャッシュ・フローを算定することができました。
物件価値を求める際には、キャッシュ・フロー(NCF)を還元利回り(キャップレート)で割り戻して算定します。

収益価格=純収益(NCF)÷還元利回り=93,728,980円÷5.3%=1,760,000,000円(1千万円以下切捨て)

直接還元法においては、算定した純収益を還元利回り(キャップレート)で割り戻して不動産の価値を算定しますが、 その際に算定された価格を、収益価格といいます。

なお、直接還元法にはNCFから計算する方法とNOI(運営純収益)から計算する方法がありますが、不動産鑑定評価においては、 通常はNCFから計算することになります。投資家は、NOIから直接還元法によって算定する場合もありますが、 正式な鑑定に用いられるのは、NCFとなります。
NCFとNOIは、資本的支出(CAPEX)に差が生じますが、それぞれを利用して算定する際の還元利回り(キャップレート)も異なるものを利用します。

少し考えれば分かることですが、
・NOI>NCF
ですので、
・キャップレート(NOIベース)>キャップレート(NCFベース)
となります。




ご参考情報

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【書籍情報】
書籍名:金融マンのための不動産ファイナンス講座
著者:山下章太
出版社:中央経済社
発行日:2011年3月25日
税込価格:3,150円
A5判/300頁
ISBN978-4-502-68490-6

内容(「BOOK」データベースより)
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