YENLAND TIME :  

 Top >  Library  |  印刷する印刷ページ       はてなブックマークに追加 このページを Google Bookmarks に追加 RSS

大区分

投資

中区分

不動産

小区分

投資不動産の評価に関する事項

項目

12. 鑑定評価の事例演習3:収益還元法(DCF法)

入力者 山下章太 更新日 20110525

鑑定評価の事例演習3:収益還元法(DCF法)

事例3:収益還元法(DCF法)による不動産評価

A建設が保有しているオフィスビルを、今度は収益還元法(DCF法)で評価してみましょう。

<事例>

先ほどの事例と同様に、賃料は@22,000円/坪で、1,600uが賃貸面積として不動産評価額を算定するものとします。

また、物件に関するその他の条件は、下記のように評価します。
・敷金:月額賃料の10ヶ月分
・空室率:5%
・PMフィー:賃料収入の2%
・テナント募集費用:1ヶ月賃料の10%
・その他運営費用:23,257,236円
・敷金等の運用利回り:1.0%
・資本的支出(CAPEX):1,920,000円
・割引率:5.0%
・最終還元利回り:5.5%
・売却費用:2.0%

DCF法で利用する純収益等に関しては、基本的に、直接還元法で算定する前提とほとんど変わりません。

すなわち、運営収益については、収入として見込むことができる賃料収入、水道光熱費収入、駐車場収入、 その他の収入を合算したものから、空室率を加味して運営収益を算定します。運営費用については、維持管理費(BM:ビルメンテナンス)、 水道光熱費、修繕費、プロパティマネジメントフィー(PM)、テナント募集費用、公租公課等、損害保険料、その他費用などを合算して算定します。

直接還元法とDCF法が異なる点は、キャッシュ・フローを作成して算定する期間とそれ以降の復帰価格を分けて計算する点です。

すわなち、
DCF法による不動産評価額=期間収益の現在価値+復帰価格の現在価値
となります。

例えば、キャッシュ・フローを作成する期間を5年間とすると、キャッシュ・フローの現在価値を計算する算式は以下の通りとなります。

キャッシュ・フローの現在価値を計算する算式

予想期間を超えたキャッシュ・フローは、復帰価格として算定することになりますが、 復帰価格はその時点において物件を売却したものとみなして算定します。
すなわち、
復帰価格=(キャッシュ・フロー÷割引率)×(1−売却コスト)
となります。

この前提で、A建設が保有するオフィスビルをDCF法によって算定してみます。

ここではサンプルとして、今後10年間の予想キャッシュ・フローをもとに、DCF法を適用することとします。
まず、運営収益を算定する際には、賃料収入等から空室率等を加味して、図表Xのように今後10年間の運用収益を算定します。

今後10年間の運営収益の算定

今後10年間の運営収益の算定

次に、運用費用を算定する必要がありますが、与えられた条件から、下図のようになりました。

今後10年間の運営費用の算定

今後10年間の運営費用の算定

上記の運営収益から上記の運営費用を差し引くと今後10年間の純収益(NOI)が算定されます。
これに、一時金(敷金、保証金など)の運用益を加味し、資本的支出(CAPEX)を加減算すると純収益(NCF)が算定されます。

NOIとNCF

NOIとNCF

上記で算定されたNCFを割引率(5.0%)で現在価値に割引くと、 年度ごとに発生するキャッシュ・フロー(NCF)の割引現在価値を算定することができます。

NCFから割引現在価値の算定過程

NCFから割引現在価値の算定過程

※上記の「期間収益の現在価値」は、1000円未満を四捨五入して算定しています。

図表で算定した期間収益の合計金額は、729,834,000円になりました。

これに、復帰価格を加味して、不動産の価値を算定します。
最終還元利回り(TCR:ターミナル・キャップレート)は、5.5%になっていますので、 予想純収益(NCF)93,728,980円を5.5%で割り戻して、10年後の収益価値を査定します。
10年後の収益価値=93,728,980円÷5.5%=1,704,163,000円

復帰価格は、この時点で不動産を売却したとみなして算定しますので、売却コスト2%であれば、
売却コスト=1,704,163,000円×2%=34,083,000円
を控除して、復帰価格を算定します。
復帰価格=1,704,163,000円―34,083,000円=1,670,080,000円

次に、復帰価格はあくまでも10年後の価値ですので、10年後に売却したと仮定して(割引率5.0%における10年後の複利現価率を利用して)、 復帰価格の現在価値を算定すると、
復帰価格の現在価値=復帰価格×複利現価率=1,670,080,000円×0.613913=1,025,284,000円となります。

不動産評価額=期間収益の現在価値+復帰価格の現在価値
ですので、
不動産評価額=729,834,000円+1,025,284,000円=1,750,000,000円
となります。

DCF法による収益価格

DCF法による収益価格

この事例では、対象不動産から発生するキャッシュ・フローが毎年一定として算定しましたが、実際には、 毎年異なるキャッシュ・フローを算定してDCF法を行うことが可能です。
また、不動産のDCF法は復帰価格を算定しますが、この際の収益価値の算定方法は、事例2で説明した直接還元法を利用することになります。

このように、実際にDCF法によって算定している期間は、予測期間だけで、それ以降は直接還元法によって価値を算定することになります。




ご参考情報

弊社代表の山下が執筆した不動産ファイナンスの入門書(金融マンのための不動産ファイナンス講座)が、全国書店でお買い求めいただけます。

【書籍情報】
書籍名:金融マンのための不動産ファイナンス講座
著者:山下章太
出版社:中央経済社
発行日:2011年3月25日
税込価格:3,150円
A5判/300頁
ISBN978-4-502-68490-6

内容(「BOOK」データベースより)
不動産をファイナンスとして利用するための基礎知識や、担保価値を把握するための手法、不動産を利用したファイナンスに関するさまざまな特徴を、難解な部分を極力排除したうえで、事例を交えながら解説。

出版社リンクページ:
金融マンのための不動産ファイナンス講座

amazon リンクページ





   はてなブックマークに追加 このページを Google Bookmarks に追加 RSS