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13. 鑑定評価の事例演習4:事業用物件の収益還元法(DCF法)

入力者 山下章太 更新日 20110526

鑑定評価の事例演習4:事業用物件の収益還元法(DCF法)

事例4:事業用物件の収益還元法(DCF法)による不動産評価

ここでは、事業用物件の不動産評価について解説していきます。

オペレーショナル・アセットの特徴は、自己使用している不動産ですので、賃貸用物件のように明確な賃料がある訳ではなく、 賃料負担能力によって、物件評価を行うという特徴があります。

例えば、ホテルを例にすると、ホテル運営による純収益から賃料を負担できる割合を勘案し、想定される賃料水準を算定し、 DCF法を実施するという流れになります。

A銀行は、B開発に対して融資を行っていますが、担保設定しているビジネスホテルの評価を行います。

近年、B開発が保有するビジネスホテルは、外国人旅行客の増加によって、売上高が年々増加していますが、 老朽化が進んでおり、7年目に大規模な修繕を予定しています。
このホテルの今後10年間の営業利益、減価償却費、CAPEXは、以下のように予想されています。

今後10年間の営業利益、減価償却費、CAPEX

一方、ホテル所有において掛かるコストは、以下のようになっています。

プロパティマネジメント費:賃料×1%
公租公課 土地:493,063円
公租公課 建物:4,248,862円
保険料:307,200円
テナント募集費:賃料(1ヶ月)×5%
割引率:10%
最終還元利回り:15%

まず、オペレーショナル・アセットを評価する際には、「賃借人に帰属するキャッシュ・フロー」と 「賃貸人に帰属するキャッシュ・フロー」を分けて算定するということが必要になります。

具体的な算定の手順は、以下のようになります。

@賃借人サイドに帰属するキャッシュ・フローを算定

自己所有物件ですので、運営者がCAPEXや公租公課等を負担していますが、これらの支出は、賃貸人が負担すべきものですので、 賃借人のキャッシュ・フローを算定する際には、加算する必要があります。



A賃借人のキャッシュ・フローから、賃料負担可能額を算定

賃借人に帰属するキャッシュ・フローを算定した後、その全てが賃料支払に充てられてしまうと、 賃借人が物件を運営する意味がなくなってしまいますので、賃借人の利益部分を控除したうえで、賃料負担可能額を算定します。
賃料負担割合については、一概に●%というような決まりはありませんが、賃借人の業種に合わせた一般的な賃料負担率をもとに、決定します。



B純収益(NOI)と純収益(NCF)を算定する

賃借人の賃料負担可能額を賃料収入として、通常のDCF法と同様に、運営費用やCPAEXを控除して、 賃貸人に帰属するキャッシュ・フロー(NOI、NCF)を算定します。



C純収益(NCF)の割引現在価値と復帰価格を合算し、物件評価額を算定する

こちらの計算方法も、一般的なDCF法と同じ計算方法になります。
不動産評価額=純収益(NCF)の割引現在価値+復帰価格
として算定します。

ここでは、上記の手順をもとに、DCF法によってオペレーショナル・アセットの評価を実施します。



@賃借人サイドに帰属するキャッシュ・フローの算定

与えられた条件から、賃借人に帰属するキャッシュ・フローは下図のようになりました。

賃借人に帰属するキャッシュ・フローの算定

賃借人に帰属するキャッシュ・フローの算定

ここで、ホテルのキャッシュ・フロー(図表XのC)の段階では、公租公課や保険料は営業利益段階で既に控除されており、 CAPEXについても控除してホテル運営に係るキャッシュ・フローを算定しています。ただし、公租公課、保険料、CAPEXは、 実際には貸主が負担すべき支出であるため、賃借人が負担すべき支出ではありません。
このため、賃借人に帰属するキャッシュ・フロー(図表XのH)を算定する際には、これらの賃貸人が負担すべき支出を加算して、 純粋な賃借人に発生するキャッシュ・フローを算定しています。



A賃借人のキャッシュ・フローから、賃料負担可能額を算定

次に、賃借人に帰属するキャッシュ・フローから、賃料負担割合を加味して、賃借人の賃料負担可能額を算定します。
ここでは、図表Xのように賃借人に帰属するキャッシュ・フロー(図表XのA)のうち、 50%が賃料負担可能額として賃借人の賃料負担可能額(図表XのB)を算定し、賃貸人の賃料収入としています。



賃料負担可能額の算定

賃料負担可能額の算定



B純収益(NOI)、純収益(NCF)の算定

賃料負担可能額が算定されましたが、これを賃貸人の総収入(賃料収入)として賃貸人に帰属するキャッシュ・フローを算定していきます。
ここからの計算は、一般的なDCF法や直接還元法と同じです。図表Xのように、賃料収入(図表XのC)から運営費用(図表XのI:D〜Fの合計額) を控除して、運営収入(NOI:図表XのI)を算定します。
NOIを算定した後は、CAPEXを控除して、純収益を算定します。



賃貸人に帰属するキャッシュ・フローの算定

賃貸人に帰属するキャッシュ・フローの算定



C不動産評価額の算定

DCF法における不動産の評価は、下記のように、純収益(NCF)の割引現在価値と復帰価値の合計になります。

純収益(NCF)の割引現在価値と復帰価値

先ほど算定した賃貸人に帰属する純収益(NCF)から割引率(10%)を用いて、今後10年間のキャッシュ・フローの割引現在価値を算定します。
この結果、図表Xのように算定されました。



純収益(NCF)の割引現在価値

純収益(NCF)の割引現在価値

計算された割引後キャッシュ・フロー(図表XのP)の合計金額が84,121,772円となりますが、 これが予想期間である今後10年間から発生するキャッシュ・フローの現在価値となります。

復帰価格の計算は、予想期間終了後において予想されるキャッシュ・フローと最終還元利回り (ターミナル・キャップレート)を用いて算定します。
計算過程は、下図のようになります。



復帰価格の算定

復帰価格の算定

これで、キャッシュ・フローの割引現在価値と復帰価格が計算できましたので、下図のようにこれらを合算して、 DCF法における不動産評価額(収益価値)が計算できます。



DCF法による収益価値の算定

DCF法による収益価値の算定

ここでは、オペレーショナル・アセットの不動産評価額をDCF法で算定する事例を説明しました。
収益物件のDCF法との違いは、賃借人が負担できる賃料負担可能額を算定し、それを総収益(賃料)として評価を行う点です。
一旦、賃料負担可能額を計算した後は、一般的なDCF法と同じ方法で評価を行うことになります。

オペレーショナル・アセットは、不動産評価において採用する、賃料収入などの外部の客観的な指標がないため、 対象事業の事業収益を分析し、評価を行う必要があります。このような理由から、一般的な不動産評価と比較すると、 対象事業に関する理解が必要となり、作成された事業計画の妥当性を検討するための財務分析能力が必要となります。




ご参考情報

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【書籍情報】
書籍名:金融マンのための不動産ファイナンス講座
著者:山下章太
出版社:中央経済社
発行日:2011年3月25日
税込価格:3,150円
A5判/300頁
ISBN978-4-502-68490-6

内容(「BOOK」データベースより)
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