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不動産ファイナンス(融資取引)

項目

3. 不動産ファイナンスにおける担保設定

入力者 山下章太 更新日 20110814

第三者対抗要件

担保を考えるうえで、重要な概念は、「第三者対抗要件」です。

対抗要件(たいこうようけん)とは、すでに当事者間で成立した法律関係・ 権利関係(特に権利の変動)を相手方の当事者又は第三者に対して対抗(主張) するための法律要件をいいますが、当事者は契約等で担保提供しているわけですから、 それほど問題になりません。

なぜ、「第三者対抗要件」が重要かというと、担保契約の当事者でない者 (第三者)は知らない可能性があるからです。

たとえば、虎ノ門銀行がA社の株券を担保に取っていたとします。 その後、A社は丸の内銀行からの借入の担保として、同じ株券を使っ たとすると、二重に担保となっているのですが、虎ノ門銀行も丸の内銀行もお互 い自分の担保だと思っています。

丸の内銀行が融資を行う前に、既に株券を虎ノ門銀行が担保としていることを 知らなかったわけですが、これは知らなかったでは済まされません。

この場合は、A社が全面的に悪いのですが、金貸しを商売にしている 銀行にとってみれば、あってはならないことです。

【図表:二重担保設定】

二重担保設定

さて、この場合の虎ノ門銀行と丸の内銀行が、担保設定に関しては第三者です。 第三者対抗要件とは、本件の虎ノ門銀行と丸の内銀行がどちらが本当の権利者なの かをはっきりさせることです。

【図表:第三者対抗要件】

第三者対抗要件

逆に言うと、第三者対抗要件が具備(グビ)されていなければ、別の人に担保に取られて しまっても文句はいえません。



担保設定の方法

担保権の設定には、質権、譲渡担保、抵当権などの方法がありますが、 担保設定する資産に応じて、使い分けることになります。

【図表:対象資産と担保設定方法の例示】

対象資産と担保設定方法の例示



質権とは

質権は、資産を担保にする代表的な方法です。具体的には、質権設定契約を締結し、 担保対象資産を引き渡すことによって、担保とします。つまり、担保設定において、 契約+現物占有が行われるタイプです。

Xさんが、質屋で時計を質入して、5万円お金を借りるのと同じで、 担保対象資産は質屋が保有することとなります。



譲渡担保とは

譲渡担保とは、担保とするために譲渡するというタイプの担保 設定方法です。基本的な担保設定方法は、質権とほとんど同じで、 契約+現物占有によって行われます。建付けとしては、譲渡という 方法を採りますので、質権とは法的な担保設定方法が異なるだけで、 実質的にはほとんど違いはありません。

代表的な譲渡担保は、車の購入時の自動車ローンですが、借入に よって自動車を購入するとき、借入金を返済するまで、自動車の所有 者は自動車ローンの貸し手になっています。

仮に、借入した人が、自動車ローンが払えなくなったときは、貸し 手は、自動車を売却することによって、自動車ローンの回収を行います。

【図表:自動車ローンの譲渡担保】

自動車ローンの譲渡担保



抵当権とは

抵当権とは、不動産などに特有の担保設定方法です。不動産に関する権利は、 登記簿謄本に記載されています。誰が土地の所有者か?、誰が担保を設定してい るか?ということは、全て登記簿謄本を見れば、確認できます。担保は第三者対 抗要件が重要ですが、不動産の場合は、登記簿謄本を見れば、誰が所有していて、 誰が担保設定しているかが一目瞭然ですので、対抗要件を具備するためにとても 適したものとなっています。

抵当権は、不動産の登記簿謄本に担保設定していることを登記することで、 担保設定をするタイプです。

たとえば、図表Zのように、先に虎ノ門銀行が融資の担保としている不動産が ある場合、丸の内銀行は、登記簿謄本を閲覧すれば、対象の不動産が既に担保設 定されているかどうかが分かります。この場合、対象不動産に設定された抵当権 の第1順位は虎ノ門銀行ですので、丸の内銀行としては、虎ノ門銀行が担保実行し て回収した後に、融資金額を回収できる担保余力が残っているかを判断し、融資 を行うことが出来るかどうか、この不動産に担保設定をするかどうかを判断する ことになります。

【図表:不動産の第三者対抗要件】

不動産の第三者対抗要件

預金担保についての解説

預金担保は、円建て預金の場合は、不動産や株式などの他の担保と異なり、 価格変動が発生しない最も確実な担保ですので、金融機関の担保としては最適です。

預金債権には、質権が設定されることが多いのですが、一般に預金債権の譲渡・ 質入等の処分は禁止されていることが多くみられます。

預金担保は、自分の銀行に設定している預金について担保設定していますので、 預金口座のある銀行が担保設定する際に利用するのみです。銀行以外の者が、預金 担保を設定するというのは困難ですし、自分の銀行以外の預金を担保にするのも困難です。

また、貸付を行っている銀行に預金が存在していれば、質権設定が仮に無効で あったとしても相殺による回収が可能です。たとえば、図表Xのように銀行が100百 万円の貸出を行っている先があったとして、その先から預金の預け入れが50百万円 あったとします。銀行が融資を行う際には、銀行取引約定書という基本契約を締結 しているのですが、この銀行取引約定書には、債務不履行時(デフォルト)の相殺 に関する事項も定められており、銀行は、貸出金を回収するため、50百万円の預金 を強制的に自分の貸付金の回収に充当することができます。このように、自分の銀 行に預け入れている預金であれば、強制的に相殺対象とすることができますので、 銀行としては預金担保を取っていなかったとしても、貸付の保全をすることができます。

【図表:相殺のイメージ】

相殺のイメージ

預金担保を設定するという、確実な担保設定方法もありますが、銀行にとって見れば、 自分の銀行に預金口座を開いてもらい、その口座を使ってもらう方が、貸出の保全という 観点からは重要です。

ちなみに、預金は、登記簿謄本を利用しませんので、抵当権を利用するということはありません。



不動産の担保について

不動産は融資の際の担保に用いられる代表的な資産です。不動産担保融資は、土地・建物などの不動産に 担保設定して融資を行うものですが、不動産の売却による処分価値を、会社の信用力の補完として利用します。

預金担保を除く全ての担保は、必ず掛け目が掛かりますので、評価額の100%を担保価値とすることはあり ません。不動産担保を設定する場合は、不動産価値を算定し、70%程度の「掛け目」を掛けた価格を担保価値 とします。この掛け目は、融資形態や経済情勢によって異なります。

企業が保有する不動産の金額は大きいのですが、「日本の金融=不動産金融」といってしまってもいいく らい、日本企業の資金調達に利用される不動産の割合は大きくなっています。現在は、不動産バブルの教訓 を踏まえて、不動産の値上がり益(キャピタルゲイン)のみに着目した融資は少なくなってきているとは思 いますが、それでも、不動産担保の割合は相当大きいのが現状です。

売掛債権や在庫等の流動資産は、短期間で資金化されてしまいますので、担保債権の資金回収と返済の タイミング等を細かに設定していかなければいけませんが、不動産は長期間保有されることが前提ですので、 担保設定は一度だけで済みます。この点からは、固定資産ほど担保設定が楽に行うことができ、担保として は適していることが分かります。

不動産の担保設定の方法には、@質権、A譲渡担保、B抵当権がありますが、ほとんどがB抵当権を利用 します。



不動産の質権

不動産を目的物とする質権は、質権者が使用することとなるため、質権者は自ら不動産を使用するか、 誰かに賃貸することをしなければなりません。担保設定する全ての不動産を銀行が利用したり、銀行が自 ら担保物件を賃貸して、賃貸物件を管理するのは大変煩雑な事務手続きが必要となりますので、通常は用 いられません。



不動産の譲渡担保

譲渡担保については、第三者対抗要件を満たすために必要な所有権移転登記に登録免許税(固定資産税 評価額の2%)が掛かるほか、不動産取得税や固定資産税が掛かるため、質権と同様に、譲渡担保も不動産の 担保設定方法として、利用されることはありません。

譲渡担保は、そもそも、担保とするために譲渡するという行為ですので、物件の所有権が銀行に移って しまいます。質権とも同様ですが、銀行が自ら物件の保有や賃貸を行わなければならなくなり、また、余 計な費用も掛かります。所有権が銀行にありますので、場合によっては、銀行のB/Sに計上されるというこ とにもなりかねない可能性もあります。



不動産の抵当権

不動産の担保設定としては、通常、抵当権が用いられます。

抵当権は、不動産を担保としていることを、不動産登記簿謄本の乙区に記載することによって、第三者 対抗要件を具備します。先ほどからの繰り返しになりますが、図表のように、登記簿謄本に「抵当権が設 定されていますよ!」ということを記載することによって、誰でも分かる状態にしているのです。

【図表:不動産の第三者対抗要件】

不動産の第三者対抗要件

不動産の抵当権設定登記には、債権額又は極度額の登録免許税0.4%が必要になります。

抵当権には、「普通抵当権」と「根抵当権」があります。

「普通抵当権」は、特定の債権の担保として用いられる担保設定方式であり、たとえば、『平成XX年X月 X日付金銭消費貸借契約に基づく担保』というように、個別債権と紐付けが行われるタイプです。個別の貸付 契約に紐付けになった担保権ですので、担保設定の対象となった貸付以外の担保とはできません。

「根抵当権」は、運転資金融資を行っている場合や手形融資を行っている場合など、融資取引が日常的に 発生するようなケースを想定した担保設定方法で、『金額XXまでの金銭消費貸借契約に基づく担保』という ような設定の仕方になります。個別の貸付契約に紐付けになっていない担保権ですので、担保設定した際に 存在しない貸付金でも回収可能となります。

このように、「根抵当権」であれば、担保不動産と個別貸付金の関係をいちいち気にしなくてもいいので すが、「普通抵当権」の場合は、個別の貸付金と担保不動産の関係を気にしながら融資を行う必要があります ので、注意が必要です。

【図表:抵当権と根抵当権の比較】

種類 内容 記載方法
抵当権 個別の融資契約に紐付きで、1つの融資契約につき、1つの担保設定を行うタイプ 平成XX年X月X日付金銭消費貸借契約に基づく担保
根抵当権 個別の融資契約に関係なく、手形取引、融資取引など幅広く担保とするタイプ 金額XXまでの金銭消費貸借契約に基づく担保


仮登記について

場合によっては、抵当権を設定せずに仮登記がなされる場合があります。これは、登録免許税が1物件あた り1,000円と安く、順位保全ができるため、実務では用いられています。

ただし、この方法は、正式な担保権ではなく、不動産を処分して貸付を回収するなどはできませんので、 担保処分等を行う必要が発生した際には、抵当権の設定が必要となります。

この方法を用いるメリットは、仮登記から抵当権に振り返る場合に、順位番号が維持されるため、不動産 の保全額が幾らになるかをあらかじめ予想することができる点です。

仮登記の利用は、図表のように、あくまで抵当権設定をするときのための準備として、仮登記を行って 抵当権設定時の順位を確保しておき、何かのイベントが発生した時点(債務者の財務内容が悪化した場合な ど)に、本登記(抵当権の登記を行う)によって、正式な抵当権を設定するような流れで利用されます。

【図表:仮登記の利用方法】

仮登記の利用方法



その他の不動産関連担保権

不動産の担保を設定する場合、不動産に附随する権利に対しても担保設定するケースが多くあります。 不動産が建物の場合、災害などによって、何らかの損失を追う場合がありますが、それらの損失を補填す るために締結している損害保険や火災保険などが代表的な附随担保となります。

火災保険

火災保険担保とは、債権者が債務者の火災保険金請求権から支払を受ける権利です。たとえば、不動産 (建物)に担保設定していて、その建物が火事で消滅した場合、建物は既に消滅していますので、抵当権 を設定していても、銀行は消滅した不動産から融資を回収することはできません。この場合、消滅した不 動産に対して掛けられていた、火災保険が支払われることにより、回収することができます。

火災保険担保の方法には、抵当権に基づく物上代位による他、a.質権設定、b.抵当権特約条項の追加、 c.債権保全火災保険の締結、d.保険金受取人指定およびe.単純譲渡の5つが考えられます。これらのうち 、保険金受取人指定は債権者である金融機関を保険金受取人に指定するもので、優先弁済権がありません。 また、単純譲渡は質権と同様でともに実務で利用される例は稀です。

ただし、ノンリコースローンの場合はともかく、企業が営業に利用している不動産の火災保険を、不動 産の建設資金として利用させなければ、営業を続けていくことはできませんので、火災保険として支払われ た保険金で、融資の回収をしてしまってもいいのか?という議論はあります。

リース債権担保

企業が必要とし自らの責任で選定した物件をリース会社がその指定された売主から購入のうえ、その企 業だけに比較的長期に渡って賃貸する契約です。

形式上は賃貸借契約で、何らかの資産を実質的に取得するものですが、法的には所有権はリース会社が 保有し、企業には所有権はありません。

リースの場合は、物件の取得価額、金利、保険料や税金等の経費および利益等のおおむね全額がリース 料によって回収できるように算定されています。このような類型のリースをファイナンスリースといい、 日本ではほとんどがこの類型となっています。ファイナンスリースは、ファイナンス(金融)取引として 資金調達し、実質的に購入しているのと同じ状態です。

それ以外にたとえば汎用性のある物件のリースで、契約期間中の予告期間を置いた解約が認められるも のをオペリーティングリースと呼んでいます。このタイプのリースは、企業は完全に支払を契約上確約して いる訳ではありませんので、実質的に購入しているとまでは言い切れません。

リース会社のユーザーに対するリース契約上の債権をリース債権といい、具体的には、aリース期間中に おけるリース料債権 bリース契約がリース期間の途中で終了した場合に発生する規定損失金債権 c再リー ス料債権 dリース終了時のリース物件の返還債権およびe保険会社に対する保険金請求権等が考えられます。 通常、担保の対象としてのリース債権といえばこのうちリース料債権と規定損失金債権を指します。

工業所有権

工業所有権とは、産業上の知的財産権のことで、わが国では特に特許権、実用新案権、意匠権、商標権の 4種の産業上の排他的支配権を指します。

専用実施権は、設定行為で定められた時間的・場所的・内容的制約の範囲内で特許発明・登録実用新案・ 登録意匠またはこれに類似する意匠を業として独占的に実施しうる排他的な権利で、商標使用権では専用使 用権といい、物件的権利であるとされています。したがって、特許権者等は専用実施権を設定したときは、 同一内容の専用実施権を重ねて設定することはできず、また自ら実施することもできません。

 

通常実施権は、許諾もしくは法律の規定または裁定により定められた時間的・場所的・内容的制約の範囲 内で特許発明・登録実用新案・登録意匠またはこれに類似する意匠などを業として実施できる権利で、商標使 用権では通常使用権といい、債権的権利であるとされています。したがって特許権者等は既存の通常実施権と 同一内容の通常実施権を重ねて許諾することができ、また自ら実施することもできます。




ご参考情報

弊社代表の山下が執筆した不動産ファイナンスの入門書(金融マンのための不動産ファイナンス講座)が、全国書店でお買い求めいただけます。

【書籍情報】
書籍名:金融マンのための不動産ファイナンス講座
著者:山下章太
出版社:中央経済社
発行日:2011年3月25日
税込価格:3,150円
A5判/300頁
ISBN978-4-502-68490-6

内容(「BOOK」データベースより)
不動産をファイナンスとして利用するための基礎知識や、担保価値を把握するための手法、不動産を利用したファイナンスに関するさまざまな特徴を、難解な部分を極力排除したうえで、事例を交えながら解説。

出版社リンクページ:
金融マンのための不動産ファイナンス講座

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