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不動産ファイナンス(融資取引)

項目

4. 不動産ファイナンスとノンリコースローン

入力者 山下章太 更新日 20110828

不動産ファイナンスとノンリコース・ローン

不動産ファイナンス=ノンリコースローン(非遡求型融資)と言っても過言ではないくらい、不動産のノンリコースローンは浸透しています。

ただ、ノンリコース(非遡求)と言っても、全く遡求されない訳ではありませんので、「リミテッド・リコース(限定遡求)」 と言った方が正確な表現になるのでしょう。

ノンリコースローンは、不動産からの回収に限られますので、通常の担保設定方法よりも有利になる場合と、不利に なる場合があります。

金融機関が貸付を行う場合、貸付債権の返済原資は借入人のすべての財産ですが(リコースローン、遡及型融資)、貸付債 権の引当財産を一定の財産(責任財産)に限定し、借入人の他の事業や財産からの回収を制限または禁止するノンリコースローン (非遡及型融資)と呼ばれる形態があります。ノンリコースローンは、流動化、買収ファイナンス、プロジェクト・ファイナンス、 アセット・ファイナンス等のさまざまな場面において活用されています。

貸付債権の返済原資を責任財産に限定することで、借入人としては他の事業や財産に影響を及ぼすことなく借入を実現でき、 貸付人としては責任財産を構成する財産の収益力やその他の経済価値に主に着目して与信条件を決定することとなります。

ノンリコースローンにおいては、借入人の他の事業や財産からの回収が認められないため、責任財産に対する優先権を確保す ることが重要となります。そのため、多くの場合において、主な責任財産には担保権を設定することになります。

責任財産限定特約

ノンリコースローンにおける特有の規定の中で根幹をなすのが責任財産限定特約です。責任財産限定特約とは、債権者と債務 者との間であらかじめ債務者が有する財産のうち、一定の財産(責任財産)に限って強制執行をすることができると取り決めをす ることをいいます。契約においては、以下のような規定がなされることが一般的です。

@借入人による本契約に基づく債務の支払は、責任財産のみを返済原資として行われ、借入人の有する他の資産には及ばない。

A貸付人は、責任財産以外の資産に対して強制執行および保全処分を行わないものとし、責任財産以外に対する強制執行およ び保全命令を申し立てる権利を放棄する。

B責任財産がすべて換価・処分しても未払の債権が残る場合には、貸付人は、当該未払額に相当する債権を放棄したものとみ なす。

なお、ノンリコースローンは、責任財産限定特約が設定されていますが、責任財産に対して影響を及ぼさないような措置が採 られます。ノンリコースローンでは、責任財産以外の影響を極力排除する必要があります。たとえば、オリジネータが倒産するこ とによって、責任財産に影響を及ぼすことは排除すべきですし、オリジネータの倒産がなくとも、投資家、役員、債権者による倒 産申立についても排除すべきです。

たとえば、SPCを使用してファイナンスを行う際に、SPCの役員が倒産の申立を行う可能性がゼロであるとは言い切れません。こ のため、SPCの役員に対しては、図表Xのような倒産不申立に関する誓約書によって、倒産申立を行わないようにします。

【図表X:役員の倒産不申立のサンプル】

役員の倒産不申立のサンプル

他の関係者についても、同様です。たとえば、業務委託契約によって債権者となる可能性があるものが存在する場合、契約当 事者との間で、下記のような文言が入ることが多く見られます。

「乙は、甲が本件ローン貸付債権を全て完済した日から1年と1日が経過するまでは破産、民事再生、その他類似の手続きの申立 を甲に対して提起しないことを約束し同意する。」

再三になりますが、ノンリコースローンにおいては、責任財産からの回収を最優先しなければなりませんので、ノンリコース ローンを提供している銀行は、自分以外が倒産を申し立てることを、完全に排除しなければ、倒産隔離を実現することはできません。



ノンリコース・ローンとコベナンツ

シンジケートローン(協調融資)、ノンリコースローン(非遡及型融資)などの契約においてしばしば登場する項目に、 「コベナンツ」というものがあります。

コベナンツとは、制約条項のことです。融資を行う際に、銀行等は守ってほしい事項を契約上に入れ込み、借主に遵守 することを要求します。たとえば、モニタリングのために、決算書を毎期提出させるような情報開示に関する事項であった り、債務者区分に影響を与えないように、純資産維持・黒字維持のような会計面での財務制限条項(財務コベナンツ)を入 れたりします。

シンジケートローンは譲渡を前提に契約を締結する場合が多く、銀行取引約定書を締結していない場合が大半です。この ため、コベナンツを設定しておかなければ、銀行取引約定書のような銀行にとって有利となる、期限の利益喪失事由が存在し ないことになってしまいます。倒産してから回収すると一般更生債権等としてプロラタ・パリパス(同額・同順位)になっ てしまいますので、コベナンツは資金回収漏れを防ぐための、予防的な手段として用いられます。回収不能となりそうな場合 は、他の債権者よりも先に回収してしまおうというものです。

コベナンツは、ノンリコースローンで融資を行う際には、ほとんどといっていいほど登場することになります。



不動産流動化とノンリコースローン

ここでは、架空のA社をサンプルに記載します。

A不動産は、以前、経営破綻の危機にありましたが、現在は以前に比べると経営は安定してきました。 一時期、かなりの数の不動産を保有していましたが、資金繰りに窮したことにより、ファンドに保有資 産を売却したりして、保有資産は少なくなってきました。まだ、一部の賃貸物件と有利子負債を保有し ており、最終的な資産処分を行うことを検討しています。流動化について、A不動産のケースで見てみま しょう。

A不動産は、保有賃貸物件を流動化し、有利子負債の圧縮を計画しています。不動産売却流動化前のA 不動産は、以下のようなB/Sでしたが、営業利益が50百万円、支払利息が30百万円であり、有利子負債の 支払金利の負担がかさんでいました。

また、銀行としても、以前のA不動産の債務者区分が悪化した状態を引きずっていますので、与信先 を何とかA不動産以外に変更できればと思っています。

【図表X:流動化前のA不動産】

流動化前のA不動産

この状態から賃貸物件を15億円で流動化し、売却資金で有利子負債の圧縮を行ったとします。

【図表Y:不動産の流動化】

不動産の流動化

この結果、流動化後のA不動産のB/Sは、図表Zのようになりました。

【図表Z:流動化後のA不動産】

流動化後のA不動産

A不動産は、賃料収入は減少する結果となりましたが、仲介収入や管理報酬の追加により賃料以外の 売上高が増加し、販管費の圧縮が可能だとすると、利益水準を極端に下げずに、大幅な有利子負債の圧 縮が可能となります。

銀行から見た場合も、与信先をどこにできるかによりますが、A不動産のエクスポージャーから別の 対象に移転することができると、行内格付や債務者区分も向上することになります。



ノンリコースローンと返済のタイプ

ノンリコース・ローンに限らず、借入金の元本の返済方法(約定返済)はいろいろありますが、大まかに分けると、以下のような返済方法に区分できます。

  • フル・アモチ(均等弁済)
  • バルーン付アモチ
  • ブレット(期限一括弁済)

まず、「フル・アモチ」とは最終回まで同額を常に返済していくタイプです。図表Xのように、均等弁済で満期時 まで返済していくタイプをイメージして下さい。

仮に5年間で元本を20ずつ返済をしていくと、残高は下図のように推移していきます。

【図表X:フルアモチの残高推移のイメージ】

フルアモチの残高推移のイメージ

次に、「バルーン付アモチ」ですが、バルーンとは最終回返済額が他の返済日に比べて多くなっているものをいい ます。この呼び方は金融機関によっても異なりますが、テイルへビーという言い方もあります。この返済タイプは、融 資期間中に全額を返済することを前提としていないため、期日にリファイナンスすることを前提としています。

たとえば、5年間で最終回に60返済し、その他の返済日に10ずつ返済する場合、残高が図表Xのように推移していき ます。融資期間は5年間となっていますが、毎年10ずつしか返済が行われませんので、10年間で完済することを前提と して融資を行っていることになります。

【図表Y:バルーン付アモチの残高推移のイメージ】

バルーン付アモチの残高推移のイメージ

「ブレット」は最終回のみにしか元本返済が行われないタイプです。図表Zのように、最終回の返済までは、残高 は貸出額と同額になっていますが、元本の返済を一切行いませんので、設備投資などのように、返済を前提とした借 入ではありません。

【図表Z:ブレットの残高推移のイメージ】

ブレットの残高推移のイメージ

上記は、約定弁済の手続ですが、約定弁済以外の返済もありますので、念のため整理します。返済方法は、大きく 下記の2つに分かれます。

♦約定弁済

契約上の返済スケジュールに応じた返済です。先ほど説明したフルアモチ、バルーン付アモチ、ブレットは、約定 返済のペースを表すものです。

♦期限前弁済

約定弁済期日前に返済を行うことを総称して、期限前弁済と言いますが、期限前返済については、契約上は以下の2 つのタイプがみられます。

  • 任意期限前弁済

不動産ファイナンスは、一般的な借入と比べると金利が高くなるケースも存在します。このような場合、 借手には リファイナンス(借換)のインセンティブがはたらきます。このような、借手からの約定スケジュールによらない返済 を、「任意期限前弁済」といいます。

ただし、貸手サイドでは、融資を行うためにファンディング(資金調達)を行っているため、 約定スケジュールに よらない返済が行われてしまうと、ファンディング・ロス(調達時の金利ロス)が発生してしまいます。

一般的な融資契約は、任意期限前返済を可能にしていると思いますが、貸手サイドでは、ファンディング・ロスを発 生させないようにするために、任意期限前返済を認めるタイミングを、契約書上に定めるケースもあります。

  • 強制期限前弁済

貸手サイドからすれば、不動産から発生するキャッシュ・フローは可能な限り融資返済として使用して欲しいと思っ ています。

特にノンリコースローンの場合、不動産から発生するキャッシュ・フローは、ローンの返済に優先的に充当されるべ き資金ですが、設備投資などに使われてしまうと、 返済に悪影響を及ぼすと考えられます。このような観点から、融資 契約に設けられているのが、「強制期限前弁済」です。

具体的には、融資契約において、一定の基準を設けて必要現預金額を設定し、その金額を超える現預金を借主が有し てる場合は、 余剰資金を返済に充当させるという契約が締結されます。これを、「キャッシュ・スイープ(余剰資金強 制弁済条項)」といいます。




ご参考情報

弊社代表の山下が執筆した不動産ファイナンスの入門書(金融マンのための不動産ファイナンス講座)が、全国書店でお買い求めいただけます。

【書籍情報】
書籍名:金融マンのための不動産ファイナンス講座
著者:山下章太
出版社:中央経済社
発行日:2011年3月25日
税込価格:3,150円
A5判/300頁
ISBN978-4-502-68490-6

内容(「BOOK」データベースより)
不動産をファイナンスとして利用するための基礎知識や、担保価値を把握するための手法、不動産を利用したファイナンスに関するさまざまな特徴を、難解な部分を極力排除したうえで、事例を交えながら解説。

出版社リンクページ:
金融マンのための不動産ファイナンス講座

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