不動産ファイナンスと匿名組合出資(TK出資)
流動化が行われる際には、匿名組合出資(TK出資)という仕組が採れられることがあります。
不動産ファイナンスとして利用される場合は、下記のようなスキームで投資されます。

※信託受益権の箇所で記載しましたが、 匿名組合出資(TK出資)で収益分配を行う場合には、不動産特定共同事業法による制約を受けますので、 実際にはSPCは信託受益権などを保有します。
匿名組合出資(TK出資)の特徴
匿名組合(Tokumei Kumiai)の頭文字を取って、「TK」と言われますが、商法における組合契約の一形態です。
組合については、複数人が契約によって収益分配することになりますが、 SPCでTK出資を利用する際には、SPCとTK出資者が匿名組合契約を締結し、 損益分配に関する取り決めをすることによって成立します。
TK出資は、民法上の組合とは異なり、有限責任ですので、SPCが倒産したとしても、 TK出資者は出資額以上の責任を負いません。すなわち、有限責任です。
日本においては、構成員課税(パススルー)が行われる形態が極端に少なく、 特に会社形態で構成員課税が可能な仕組は存在しません。外国であれば、LLC(日本での合同会社)がパススルー可能であったりしますが、 日本は税務上の扱いが厳しく、単独でパススルー可能な仕組を作ることができません。
このような事情から、SPCから発生する損益をパススルーするために、 TK出資を行い、利用しています。
ただし、TK出資は、いろいろなスキームで利用されていて、税務当局との見解が相違する場合もあります。
当初と比較すると、税務上の取扱いが頻繁に変更されています。
例えば、当初はSPCがTK出資者に配当する場合に、源泉徴収を行わなくても良かったのですが、
現在はTK配当を行う際には、20%の源泉徴収を行わなければならなくなっています。
営業者の会計処理の特徴
匿名組合契約(TK)は、営業者(会社)と投資家の間の契約ですので、厳密には株式等の出資ではありません。
株式会社の株主、合同会社の社員ではないため、議決権等は有しておらず、会社の意思決定には関与することはできません。
営業者(会社:SPC)への出資ではありませんので、営業者のB/S(貸借対照表)においても、 純資産の部(資本の部)には計上されません。法的な性質は、預り金と同じですので、下図のように、 「長期預り金」として一般的に会計処理されています。

ご参考情報
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【書籍情報】
書籍名:金融マンのための不動産ファイナンス講座
著者:山下章太
出版社:中央経済社
発行日:2011年3月25日
税込価格:3,150円
A5判/300頁
ISBN978-4-502-68490-6
内容(「BOOK」データベースより)
不動産をファイナンスとして利用するための基礎知識や、担保価値を把握するための手法、不動産を利用したファイナンスに関するさまざまな特徴を、難解な部分を極力排除したうえで、事例を交えながら解説。
出版社リンクページ:
『金融マンのための不動産ファイナンス講座』
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