現物出資とは、金銭以外による出資のことをいいます。
不動産を持っている人が会社に出資をしようとした場合、金銭の出資以外が認められないとすると、 一旦不動産を売却して現金にしてから会社に出資しなければならず、手続が面倒です。
現物出資とは、不動産・パソコンなど「モノ」で出資を行うことをいいます。
ただし、旧商法の頃から、会社の払込資本は重要視されており、 実際に会社の資本としてどれくらいの価値のある資産が出資されたか、ということに関して、 厳格な取り扱いがされています。
現金を出資する訳ではないので、価値を判断するのが難しいので、当然と言えば当然です。
1.現物出資の概要
現物出資については出資の目的財産の評価が難しく、過大評価がされた場合には他の株主が不利益を被り、 また、資本充実の原則を侵すことにもなりかねないため、裁判所の選任する検査役の調査を受けることが原則でした。 会社法の改正により、下記のいずれかに該当する場合には、検査役の調査は不要となっており、 現在では現物出資の取り扱いについて、かなり緩和されたといえます。
@発行する株式数が、発行済株式総数の10分の1以下であるとき
A現物出資の目的財産の価格が500万円以下であるとき
B現物出資の目的財産が市場価格のある有価証券で、その価格を相場以下としたとき
C現物出資の目的財産を弁護士、公認会計士、税理士等が証明したとき
D現物出資の目的財産が金銭債権の場合、弁済期が到来しており、かつ出資する額が債権額以下であるとき。
2.現物出資の会計処理
現物出資元企業の会計処理は、事業分離における分離元企業の会計処理に準じて行うこととされ、 出資先企業が出資元企業の子会社又は関連会社となる場合には、現物出資により取得する株式の取得原価は、 移転直前の帳簿価格に基づいて算定し、移転損益を認識しない。
一方、出資先企業が出資元企業の子会社や関連会社以外となる場合には、 出資財産の移転直前の適正な帳簿価格と時価との差額を移転損益として認識する。
3.現物出資の税務処理
現物出資の税務上の考え方は、原則として時価による資産の譲渡として処理する。
適格現物出資に該当する場合には、現物出資法人の税務上の帳簿価格(取得のために要した費用がある場合は、 その費用を加算した金額)により、譲渡したものとして処理される。譲渡損益は認識されない。
したがって、適格現物出資の要件を満たさない場合は非適格現物出資となり、 現物出資法人においては譲渡損益が発生することとなる。

