リスクフリー・レートとは
リスクフリー・レート = 無リスク資産の利子率
リスクフリー・レートは、「リスクの無い資産から受け取ることができる金利」を意味していますが、
そのような資産はこの世には存在しません。
主に、リスクフリー・レートとして利用されているものは、以下の2つです。
国債は、年限や残存期間ごとに存在しているため、
すぐにイールドカーブを作成するにはあまり適していませんので、
金融商品の評価を行う際には、LIBORが利用されることが多くなります。
- 国債(JGB)
日本においては、国債は最も安全と考えられていますが、2007年11月現在のS&P格付けは「AA」です。
実際には「AAA」の格付けを取得している会社もありますので、 日本国よりも格付が高い会社も存在していますが、国債は、 ほぼ無リスク資産に近いと一般的に考えられていますので、 リスクフリー・レートとして利用されています。
- LIBOR ( London Inter-Bank Offered Rate ) / SWAP Rate
LIBORとは、「ロンドン銀行間貸出金利」で、複数のリファレンスバンクから提示された価格を 英国銀行協会(BBA)が集計し、公表しているものを指します。
通常、円建のLIBORを「ユーロ円LIBOR」といいますが、 これは「ユーロ市場で取引される円建のLIBOR」という意味です。
スワップ・レートは、LIBORなどの変動金利と固定金利を交換する際の交換レートをいいます。
国債の種類
国債には様々な種類がありますが、発行の目的等によって分類されます。
発行期間による分類
- 超長期国債:15年(変動利付国債)・20年(利付債)・30年(利付債)・40年(利付債)
- 長期国債:10年(利付債)・10年(個人向け国債)・10年(物価連動国債)
- 中期国債:2年(利付債)・3年(利付債)・3年(割引債)・4年(利付債)・5年(利付債)・5年(割引債)・5年(個人向け国債)・6年(利付債)
- 短期国債:6カ月(割引債)・1年(割引債)
- 政府短期証券:90日(割引債)
利払い等による分類
- 固定利付債:半年毎に一定の利子が支払われ、償還時に額面金額が支払われる国債。
- 変動利付債(FRN):半年毎に支払われる利子の額が市場金利によって毎回見直される。償還時に額面金額が支払われる国債。
- 物価連動債(TIPS):元本と利息が消費者物価指数に連動して増減する。
- 割引債:途中での利払いはないが、額面を下回る額で発行され、償還時に額面金額が支払われる。かつては3年や5年のものが発行された事があるが、2002年11月以降は短期のものしかされていない。
変動利付債としては、「15年変動利付国債」が有名で、物価連動債としては「10年物価連動国債」が有名です。 特に物価連動国債は、CPI(生鮮食品を除く総合消費者物価指数)を元に評価を行うため、 評価を行う際の難易度が極めて高い商品設計になっています。
国債でのイールドカーブの作成
国債は、前頁のようにかなりの種類がありますので、発行量にはかなり差があります。
最も発行量が多いのが、10年国債です。国債の特徴は、利回りが単利で表示されていますので、
複利利回りに変更してイールドカーブを利用することになります。
発行量が少ない国債を利用してイールドカーブを作成することはるべく避けた方が良く、 例えば以下のような方法で国債のイールドカーブを作成します。
【イールドカーブの作成の例】
- 10年国債が存在する期間は、10年国債の複利最終利回りを採用
- 10年国債が存在しない期間は、20年国債の複利最終利回りを採用
- 20年国債が存在しない期間は、30年国債の複利最終利回りを採用

Bloombergより作成
LIBORについて
LIBORとは、「ロンドンの銀行間貸出金利」で、複数のリファレンスバンクから提示された価格を 英国銀行協会(BBA)が集計し、公表しているものを指します。 LIBORは、ユーロ市場での取引金利であるため、日本で一般的に用いられいる計算期間(1年=365日)とは 異なります。
外国の金利は、「ACT/360」と表示されることが多いのですが、 これは1年=360日で計算していますので、 365日ベースに直すためには、以下のように調整が必要になります。
LIBOR(ACT/365) = LIBOR(ACT/360) × 365 ÷ 360
LIBORが最も有名な、リスクフリー・レートですが、他には以下のような変動金利が存在します。
TIBOR( Tokyo Interbank Offered Rate ):東京オフショア市場における、銀行間貸出金利
- 日本円TIBOR : 365日ベース
- ユーロ円TIBOR : 360日ベース
EURIBOR( Euro Interbank Offered Rate ):欧州銀行間貸出金利
EUROベースのLIBORと誤解されている方がいらっしゃいますが、LIBORとは開示主体が異なります。
スワップ・レートについて
スワップ・レートは、変動金利を固定金利に交換する場合に必要となる金利をいいます。
例えば、
2年スワップ・レート(固定金利)=6ヶ月LIBOR(変動金利)を2年間固定金利で支払う場合に必要となる金利
となります。
ここでは、2007年11月15日のスワップ・レートを例にして、2年のスワップ・レートについて簡単に説明します。
2007年11月15日のスワップ・レートは、下表のようになります。

6ヶ月LIBORを2年間固定金利に変更する場合を例にとると、以下のような金利支払が交換されることになります。
変動金利(6ヶ月LIBOR)を2年間支払う場合

固定金利を2年間支払う場合

すわなち、スワップが意味するものは、LIBOR(変動金利)を一定期間支払うのと、 SWAP RATE(固定金利)を一定期間支払うことが等しいということをあらわしています。
LIBORをリスクフリー・レートとして用いた場合は、1年までの金利はLIBORを使用して、
その後の金利はスワップ・レートを利用してイールド・カーブを作成します。
下記は、2007年11月15日のLIBORとスワップ・レートですが、
前述のイールド・カーブは1年までのLIBORと1.5年以降のスワップ・レートを使用して作成しています。
イールド・カーブ

LIBOR

SWAP RATE

L-Tスプレッド
一般的にリスクフリー・レートとして用いられる、国債(Treasury)と
LIBORの金利差を「L-Tスプレッド」といいます。
通常は国債の方が金利が低くなります。
下図は、2007年11月16日における年限ごとの国債複利利回りとLIBOR利回りの推移および
その差(L-Tスプレッド)を示したものですが、L-Tスプレッドは、
金利性商品を評価する際にはよく登場する概念です。


