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項目 不動産と信託
入力者 山下章太 更新日 20180912


・不動産と信託

今回は不動産投資における「信託」の役割について、説明します。 大型の不動産投資を行っている会社やオーナー以外は「信託」という言葉になじみがないと思います。

比較的身近な信託としては「投資信託」がありますが、最近は「遺言信託」や「教育資金贈与信託」など様々な信託を目にします。



1. そもそも信託とは

信託とは、委託者が信託行為(信託契約など)によってその信頼できる人(受託者)に対して、財産を移転し、 受託者は委託者が設定した信託目的に従って受益者のためにその財産(信託財産)の管理・処分などをする制度です。

不動産に関して言うと、不動産の所有者(委託者)が不動産(信託財産)を信託銀行等(受託者)に預かってもらうような場合が該当します。 細かいことを言うと、法的には、所有権は受託者(信託銀行等)に移るため、譲渡のような行為ですが、 実際は信託財産を所有者(委託者)の代わりに預かっているだけです。実質的な所有者は変わりません。

信託銀行等(受託者)は不動産(信託財産)を管理しますので、 賃貸物件の場合は、信託銀行等が賃料を代わりに受け取って、受益者(不動産の権利者)に分配します。 信託契約のイメージを記載すると下図のようになります。



【信託契約による管理】

信託契約による管理



2. 信託と税金

不動産において信託を利用する理由は税金です。信託の活用は税金対策と言っても過言ではありません。

不動産を売却する場合、実際に不動産を譲渡する方法もありますが、信託している場合は、 信託受益権を譲渡すれば同じ効果が得られます。先ほどのケースでは、委託者と受益者が一致していましたが、 信託受益権を譲渡すると、下図のように委託者と受益者が異なってきます。



【委託者と受益者が異なるケース】

委託者と受益者が異なるケース



日本の税制上、不動産は移転する際に不動産流通税(登録免許税、不動産取得税)が発生します。

信託した不動産には、所有権を信託することで登録免許税(本則は0.4%)が掛かりますが、 売却しても所有者は信託銀行等のまま変わりませんので、不動産流通税はほぼ掛かりません(登録免許税が1筆1000円のみ)。 比較すると、下表のようになります。



【個人と法人の税額の比較】

現物売買(土地) 現物売買(建物) 所有権の信託 信託受益権売買
登録免許税 2% 2% 0.4% 一筆1,000円
不動産取得税 3% 4% - -
*軽減税率を加味しない場合として記載。平成27年3月31日までの登録免許税は、土地1.5%、所有権の信託(土地)0.3%とされている。

10億円の物件(建物)を現物で取得すると、6千万円の不動産流通税が掛かりますが(軽減税率を加味しない場合)、 受益権のまま売買するとほぼゼロですみます。

特に、個人オーナーに多いのですが、登記簿謄本の甲区に名前を載せることにこだわる人がいます。このタイプの人は、 信託受益権になっている物件をわざわざ信託契約を解除して物件を購入します。気持ちは分かるのですが、 何のために信託受益権にしているのか理解しているのでしょうか?

不動産の売買には、よく分からない習慣がチラホラと見られますが、本当にどちらが有利なのかを検討した方が良いと思います。




上記コラムは、週刊ビル経営(2013年09月09日号)に掲載されたものです。
掲載当時の法律、会計基準、税制を基に記載をしておりますので、現時点の内容と異なる場合があります。
詳細は、下記をご覧下さい。

月一連載:プロオーナーになるための財務基礎知識

週刊ビル経営:2013年9月09日号

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