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項目 不動産のリスク
入力者 山下章太 更新日 20180912


不動産のリスク

前回は、不動産ファイナンスにおいて利用される優先劣後構造について説明しました。
今回はファイナンスの一般的な知識として不動産の状態によるリスクについて説明します。



1.不動産のリスクとは

不動産は、その状態によって、ファイナンスとして検討しやすさが違ってきます。
仮に、更地を購入してビルを建設使用とする場合、建設までに時間が掛かりますし、 建設の過程でさまざまなリスクが発生します。

例えば、更地の上にビルを建設して、売却する場合には下記のようなリスクが存在することになります。

【物件建設のリスク】
@ビルの建設・施工を行う会社が倒産し、ビルが完成しないリスク
A近隣住民の反対に合い、ビルの建設ができないリスク
B不動産建設工事の進捗が許認可等の関係で、予定よりも遅れるリスク
C予定した時期までに、ビルの売却ができないリスク
D不動産の市況が悪化し、ビルの売却金額が当初予想よりも小さくなるリスク

かなり少なめに見積もったとしても、上記のようなリスクが発生しますし、CやDといった経済状況の変化など、 予想しようがありません。

次に、既にビルが完成していて、賃貸収入が発生している場合は、リスクは以下の通りです。

【収益稼動物件のリスク】
@空室が発生するリスク
A賃料が値下がりするリスク

この場合は、既にビルが存在していますので、そもそもビルが建設できないような、リスクは存在せず、 ある程度予想ができそうなリスクのみが発生します。

このように、不動産はその状態に応じて、リスクが異なりますが、リスクに応じたリターンが確保できなければ、 投資対象とはなりません。
同様に、ファイナンス(資金調達)を行うとしても、稼働中の物件であれば物件から発生する収支が読みやすいので、 本来であれば資金調達は容易に行えるはずです。



2.不動産投資のリスクに関する考え方

基本的な投融資の概念としては、
リターン > リスク
でなければ、なりません。これは絶対です。

前回は、優先劣後構造の話をしましたが、各プレーヤーによって許容できるリスク水準も違ってきます。
優先劣後構造の関係から言うと、許容できるリスク水準は、シニアが最も低く、エクイティが最も高くなります。

ノンリコースローン(非遡求型融資)で資金調達する場合は、 物件から発生するキャッシュ・フローのみが借入金などの返済原資になります。
その意味では、ビルを更地から建設して、販売するまでのリスクをシニアが取れるかどうかというと、 なかなか難しいと思います。

リコースローン(遡求型融資)の場合は、貸手は建設中の物件以外からも返済を受けることができるため、 既に収益稼働している物件があれば、その物件を担保として資金調達を行うことは可能です。

エクイティを投資する投資家からすれば、リスクを限定するという意味でノンリコースローンを利用したいという ニーズはありますが、開発物件をノンリコースローンで調達するということは、非常にハードルが高くなります。
誰が施工主となるか、誰が建設・施工を行うか、誰が販売を行うかによって、過去の施工、 販売の実績と照らし合わせて判断することになりますが、関係当事者の実績等に基づく信用力を判断していますので、 不動産物件のみで資金拠出が可能ではありません。
不動産オーナーが開発物件をノンリコースローンで調達しようとしても、過去に開発、販売の実績がないため、 難しいのが現実だと思います。

不動産にはさまざまなリスクが発生しますが、許容できる範囲内のリスクかどうかということで、 ファイナンスを検討していくことになります。




上記コラムは、週刊ビル経営(2014年03月10日号)に掲載されたものです。
掲載当時の法律、会計基準、税制を基に記載をしておりますので、現時点の内容と異なる場合があります。
詳細は、下記をご覧下さい。

月一連載:プロオーナーになるための財務基礎知識

週刊ビル経営:2014年03月10日号

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